臍(ほぞ)を狙え

Dame ramen y dime tonto.

日記#240 捨てるも生かすも 2021/03/03

重い腰をあげて、コンタクト屋へ割れたコンタクトの交換をしに行ってきた。保証期間内なのであまり心配していなかったのだが、保証書に『交換の際には新しい処方箋が必要です。』と書いてあるのが気になっていた。購入から2ヶ月しか経っていないのに、また処方箋がいるのだろうか?また眼科へ行って、40分待たされて、気球を睨まされて、猛烈なセールストークを聞かされるのか?

一応、店に先に行って聞いてみよう。もしかしたら私は特殊なケースで処方箋が必要ないかもしれない。でもどうかな。もしやっぱり要るんだったら、店員さん怒るだろうな。だって『必要です。』ってはっきり書いてあるんだから。それぐらいも読めないのか、と。尋ねる前に少し自分の頭で考えてみればどうだ、と。

接客業を経験すると、こういうことに敏感になる。

 

そんなことを心配しながら 店頭で恐る恐る聞いてみたら「3ヶ月以内なら処方箋は要りませんよ〜」と言われた。良かった〜。店員さんにアホの消費者だと思われなくて、良かった〜。

 

話題になっていた村上春樹のインタビュー。

Q15. SNSはいっさい見ないそうですが、その理由は?
大体において文章があまり上等じゃないですよね。いい文章を読んでいい音楽を聴くってことは、人生にとってものすごく大事なことなんです。だから、逆の言い方をすれば、まずい音楽、まずい文章っていうのは聴かない、読まないに越したことはない。
ユニクロ | LifeWear magazine | 村上春樹に26の質問

強いな。

私たちが「いや、それは偏見で SNSにも美味い文章はある!」だの「本だって全部が良い文章とは限らないだろ!」と反論しようとしても、それは彼の言葉の正しさを証明することにしかならない。あーだのこーだの、是だの非だのと騒いだところで、SNSをいっさい見ない村上春樹には届かないのだから。インターネットで一番強くなるには インターネットをやめれば良い。そのことを実感する。

(村上春樹はインターネットをやっていないとは言っていないが。)

私は村上春樹ではないし、村上春樹になりたいわけでもないので、SNSをやめる必要はないけれど、考え方としては大いに納得する。

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ついでにコンタクトの洗浄液を買ってきた。700mlで6000円なので、ちょうどグレンフィディック15年物と同じ価格帯。緑じゃなくて褐色ラベルのやつ。思えば一回の使用量もちょうどテイスティングする時と同じくらいだ。

たっかい液体ですわこと。

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喫茶店でコーヒーを飲んだ。

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喫茶店で洋梨のタルトを食べた。

美味しかったけど、洋梨の味はしないな。

洋梨の味ってなんだ?

まったく脳内再生できない。

明日買ってこよう。

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古本屋に行ってきた。古書店と言った方がいいか。

本棚は3列あるのだが、天井高く積まれた古本のおかげで写真の通路しか通ることはできない。そして誰もいない。物音がしたと思って振り返ってみても、層になった本が少しずつ滑り落ちて音を立てているだけだった。一応看板が出ていたし、ドアも開いていたので営業中であることは間違い無いのだが。

かなり心配になりながらも、一通り物色し(左右の通路は封鎖されているので全体の5%くらいしか見えないが)1983年発刊の『ゴルギアス』を掘り出し、レジ(が埋まっていると思われる本の塊)へ向かう。値札がついていないのが若干心細いが、別にプレミアがつくような本では無いので大丈夫だろう。

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2階への階段(があると思われる本の群れ)へ「すいませ〜ん、すいませ〜ん」と声をかけると、しばらくして、『古本屋の店主』とグーグル検索するとフリー素材として出てきそうな、”模範的古本屋親父”がめんどくさそうに出てきた。

「はい、350円ね。」私が左手に持ったゴルギアスをチラッとみて、めんどくさそうにそう言った。

たけ〜。新品で買ったら480円なのに。40年前の文庫が350円もするって、どういうこと??値崩れしなさすぎだろ。アップル製品か?ん?

まあ、ソクラテスの言葉の価値が 40年で劣化するわけでは無いから、妥当と言えば妥当なのかもしれない。

この350円、捨てるも生かすも私次第。

2021年3月3日