臍(ほぞ)を狙え

Dame ramen y dime tonto.

日記#92 コロンビア国家警察正しいコーヒーの淹れ方局第3特殊急襲部隊 2020/10/05

日本行きのチケットを探さなきゃならないのに全然探してない。めんどくさい。やる気がでない。疲れる。高い。金のことを考えたくない。預金額を確かめたくない。てかクレジットカードどこ行った?しばらく支払いしてないけどクレカまだ生きてるかな?ユナイテッドのサイトくそ重い。そういえばキャンセルされたフライトどうなった?長旅キライ。ホントに帰るんか?移動に60時間って短めの懲役刑じゃん。いろんな人に連絡すんのめんどいな。帰ってどうするの?早く決めんとなあ。てかどこに帰るの?なんで帰るの?帰って友達に説明するのやだな〜。なんでここにいるの?なんで生きてんの?人生って何??あ、トイレ行きたいな。コーヒー飲まなきゃよかった。あ、コーラがある。コーラ飲んじゃお。ゴクゴクゴクg トイレ行きたいなあ.....

 

ん!?

あ!すいません!!

独り言です!!気にしないでください。聞こえてませんでしたよね??

 

いつも通り、元気に日記を書いていきます。

今日はね〜私、コーヒーを淹れたよ!

(15秒で作るコーヒー)

仮にもバリスタとして働いた経験があるとは思えない、雑な淹れ方で申し訳ない。特にコーヒーパウダーを、そこらへんにあった適当なスプーンでペシペシとタンピングをするところなんてボスが見たら卒倒するかもしれない。

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有名な話だがコロンビア国家警察には「正しいコーヒーの淹れ方局」という部署があって、彼らには捜査令状なしの家宅捜索権や無条件緊急逮捕権が与えられている。

特殊な情報網を駆使して国中のコーヒー抽出状況を24時間体制で監視しており、私が今日インスタに動画をアップした時も、4分後には警察車両が到着。施錠されたドアをショットガンで蹴破り特殊部隊が踏み込んできた。

今回は初犯であり、何よりも私が日本人であることが考慮され、逮捕には至らず御免となった。ただでさえピリピリしている日本との関係に波風を立てるようなことは国家警察とて避けたかったのだろう。

 

「ムニョス指揮官!!どうして、どうして逮捕できないのですか!?」

 

「そうです指揮官。明らかなコーヒー抽出法違反です!逮捕しましょう!」

 

「ビクター、それにホセ、お前たちの気持ちは痛いほどにわかる。しかしだ。これは我々現場だけで決められる代物ではないのだよ。奴のペーパーを見てみろ。」

 

「はい!えぇっと... ハ、ハポン...??」

 

「そう、運の悪いことにこいつはハポネス、日本人だ。お前たちも我が国と日本帝国が一触即発状態なのはよくわかっているだろう。たった一件の抽出法違反だけで武力戦争を引き起こすわけにはいかんのだよ。我々にはどうしようもないことなんだ。どうか、わかってくれ。」

 

「うぅ...」

 

「...しかし、遺憾であります!!指揮官!!正義は!正義は死んだのですか???」

 

「黙れ!ビクター!この俺が!誰よりもこいつを逮捕したいと思っている!だがな!どんな正義も、共和国民の命には変えられんのだ!」

 

「し、しかし...うぅ...私はこんなことをするためにSAT入隊したのでは..ありません... うう...」

 

「涙を拭け、ビクター。撤収するぞ。」

 

「はい、指揮官..」

 

「ホセ、本部に連絡してくれ。『10月5日午後4時32分、淹れ方局第3特殊急襲部隊現場急行も、特に異常なし』っと。命拾いしたな、ハポネスさんよ。」

 

意地悪そうな笑顔でそういうと、ムニョス指揮官は私にパスポートをポンと投げてよこした。

 

「アディオス、ハポネス、またきてポリス!」

 

捨て台詞と共にホセが後ろ手で乱暴に閉めたドアは、ひどい音をたててしばらく揺れていた。

 

そして部屋はまた静かになった。

 

2020年10月5日