日記#24 住職とメントスコーラ(1000字)2020/07/29
西哥寺の明石は毎年28日からはお休みをもらって実家へ帰ることにしている。寺には住職1人が残されるが小さな寺なので問題はない。トランクに荷物を詰め込む明石を寒そうに見つめながら、住職は心配そうな顔で聞いた。
「ところで明石くん、今年の除夜の鐘どうしたもんでしょう?また昨年のようにならなければいいのですが...」
「んーその件なんですがね、住職。私一つアイデアがありまして。除夜の鐘をYouTubeでライブ配信するというのはどうでしょう?」
住職は難しい顔をして少し黙ってしまった。というのも、この長い歴史を持つ西哥寺に、何か変化が必要なことは彼も重々承知していたからである。吉岡村の人口は減り続け信仰心は薄れ、昨年大晦日に顔を見せたのはたったの2人だった。しかしYouTube配信?そんなことしていいものだろうか?
「しかしそんなことをしても仏様は怒らないでしょうか?」
「それを考えるのは住職の仕事でしょう!私はただの事務員ですからね。提案したまでですよ。」
「確かにやってみる価値はあるかもしれませんね。そこで興味を持ってもらえれば、参拝客も増えるかもしれないなあ。」
「そうです。鐘の横でメントスコーラでもやれば、とがった住職として一躍有名になれますよ。」
「まさか。そんなことをすれば、うちの不動大名がお怒りになるだろう。」
「冗談ですよ、冗談。それじゃ私は帰ります。ライブ配信見ますので。炎上だけしないように気をつけてくださいよ。それでは良いお年を。」
笑いながら車へ乗り込む明石に手を振りながら、住職の頭はすでにYouTubeのことでいっぱいだった。
大晦日の夜、明石はだいぶ酒を飲み寝床へ着いたのは元日の朝2時をすぎた頃だった。布団に半分顔を埋めてふと寺のことを思い出しスマートフォンを手にとった。住職ちゃんと配信できてるだろうか。
”西哥寺 ライブ放送” 検索
明石は視聴者数を見て愕然とした。10万人を超えている。まさか、まさか本当にメントスコーラをやったんじゃないだろうな。炎上に気を付けてと忠告したのに。嫌な汗をかきながら震える手で動画をクリックする。
そこには文字通り赤々と燃え上がる見慣れた西哥寺が写っていた。泥酔した明石にもそれがなんであるかは一目瞭然であった。
火事だ。火事だ。火事だ... かじ.. か....
遠のく意識の中で明石は、しかし確かに、忿怒の相を浮かべる不動大名の顔をスクリーンに見た。
翌朝、目を覚ました明石は西哥寺へと車を走らせた。やはり、不動大名の怒りに触れた本堂は黒く焼け落ち、そばには焼け残った鐘がひっくり返っていた。
住職!住職!どこですか!
すると鐘の中から「明石クーン」という声がする。近づいてみると、鐘の中でコーラに浸る住職の姿があった。
かくして、大晦日に鐘をひっくり返しコーラを注ぎ、本尊の不動大名をブチギレさせその火力で風呂沸かした住職はバズりにバズり、登録者数100万人を超える人気クリエイターとなった。
(そしてもちろん破門された)
ー完ー
全然日記ではなくて申し訳ない。
ワードジェネレーターでキーワードを二つ見つけ、だいたい1000字でお話を書きました(実際1200文字くらい)。こんなことをするのは初めてで、我ながら拙い出来ですが、伸び代に免じて許してやって下せえ。
ここでみんなも是非やってみて↓tango-gacha.com
こちらが今回のお題でした↓
2020年7月29日