臍(ほぞ)を狙え

Dame ramen y dime tonto.

日記#234 チンケな人生 2021/02/25

次の授業まで少し時間があるので、自動車学校の自習室でこの日記を書いている。普段ラップトップしかつかわないので、こういう時にデスクトップPCを使うとフレッシュな気持ちで作業できる。やっぱりデスクトップは良いね。姿勢が良くなるし画面がでかい分集中できる。キーボードだけかな。不満なのは。元林檎教信者としてはやはりあの薄い打鍵感が忘れられない。どうして21世紀にもなって人類はガチャガチャするでっかいキーボードを使っているんだろうか。0.5cm押し込んで認識されるキーと、0.2cmで認識されるキー。どちらが優れているかすぐにわかりそうなものだけど。

応援している人が死ぬ夢を見て寝ながら泣いたが、それが夢だと分かった瞬間、本当に心の底からうれしかった。プラスマイナスで言えば少しだけプラスだな、と思った。映画を一本見たような充足感を感じながら清々しく目覚めたら、朝のクラスに16分遅刻していた。余韻も何もあったもんじゃない。現実はせこい。

せこい現実で思い出した。

冷え性の私は冬の間、体の末端が人体とは思ぬほど低温になる。そこで普段は靴下にちっちゃいカイロを張り付けて外出しているのだが、今日はこれが仇となった。自動車学校の実車教習中、思いのほか信号待ちが多かった。予想できたことではあるが、クラッチとブレーキを最後まで踏み込むと、靴下に貼ったカイロがビタっと素肌にくっつく。これが10秒程度なら特に問題はないのだが、30秒、1分となると顔が歪むくらいの熱さになる。普段は絶妙な距離感を保ち、足先を優しく温めるカイロが拷問器具と化した。「頼む〜とまらないでくれ〜。」という かよわき仮免運転手の願い虚しく、午後5時の札幌市街は仕事帰りの車であふれている。45分間の教習中(体感で)7000回くらい信号に引っ掛かり、その度に私は自らの足の甲を香ばしく焼き上げることになった。文字どおり、身が焼ける(*)思いであった。

今確認したら若干水ぶくれっぽくなっている。これから数週間、ず〜っとちょっとだけ痛いんだろうな。人生ってやっぱりしょぼい。

しょぼい人生で思い出したが、昨日歯を磨いていたら歯の詰め物がとれた。ポロっと。舌でなぞってみるとかなり大きくえぐれているのがわかる。小さめの衛星くらいだったらすぼっとはまりそうだな。歯医者いやだな。3年以上行ってないから、おそらく山ほど問題があるし、そのことについて多大なお叱りを受けるだろう。定期検診を受けないとこんなことになっちまうんだな。やっぱり人生ってザコい。

ザコい人生で思い出したが、昨日コンタクトレンズが割れた。普段は両端から留めて液体の中にぶら下げて保管するのだが、昨日の朝見てみるとそれが落ちてケースの下のほうに沈んでいた。それ自体は大した問題ではなく、わたしは落ち着いてケースをひっくり返し掌に優しくコンコンと叩きつけてレンズを取り出そうとした。次の瞬間、わたしの1万5千円のプレシャスプレミアムレンズは58個の断片、商品価値にして0ペソの無と化した。しばらく事態が呑み込めなかった私は、洗面台の鏡の前でぼーっと手の平を眺めていた。

保証期間中だと思うので、然るべきところに持っていけば交換か修理して(職人がボンドか何かでくっつけてくれる)はずだ。保証書があれば、の話だが。なんにしろめんどくさいし、もしかしたらまた処方箋が要ります、とか言われるかもしれない。はあ。

私には為すべき天命があったはずなのだ。水膨れに悩むだの歯医者に通うだの処方箋もらうだの、こんなせせこましくて面白みのない作業に寿命を減らしている場合ではない。

もっと人の心を揺さぶるようなイベントをしてみんかい。

画像1

ポン・デ・リングのシュガーとコーヒーのカフェインは、心こそ揺さぶらないものの 脳みその方にダイレクトに来る。

 

2021年2月25日

 

*「身を焦がす」の誤用と思われるが、当時の時代背景などを踏まえて原文まま掲載した。